記憶と記録 No.15「ホスピタリティ・デザイン」 (再)
過去の日記から「記憶」を拾い出し、現在の「記録」と照らし合わせるプライベート・ノート
No.15「ホスピタリティ・デザイン」
1990年代は、私の人生のなかで最もパワフルでエネルギッシュ(死語)な時代で、移動距離も仕事量も現在の倍以上をこなしていました。
ただ、失敗も多かったですね。
90年代前半はインターネットが商用化されておらず、気軽に使えませんでしたから「思い込む力」が抑制されなかった。たとえば、「これは、まったく新しいアイディアです」なんてことが平気で言えたわけです。
今だったら、まずはネットで検索しますから「自分のアイディアなんて、探せばたくさん出てくる」ということがすぐにわかります。あえてネットのデメリットを上げるなら、行動力の抑制になってしまうことでしょうか(勘違い屋さんになれないこと)。
当時、企画プレゼンテーションで「ホスピタリティ」というワードをよく使っていました。医療や建築の分野ではお馴染みの用語ですが、デジタルコンテンツのプレゼンテーションでは新語になってしまうので、クライアントから「あなたの言うホスピタリティとは何ですか?」といった質問が必ず飛んできます。ですから、言葉の定義についてはかなり時間をかけて、かためていました。
この頃は、「なんでコンピュータの人は、アーキテクトとか‥建築のコトバを使っちゃうの?」などと、よく説教されていましたし、「ホスピタリティ」というコトバを持ち込んだ時も、かなり違和感があったと思います。
インターネットがあれば、「海外ではこのように使われています」などと説明することもできたと思いますが(実際、そういう洋書も日本にあったわけですが‥)、このときは苦言を静かに聞いていました‥
さて、そんな時代、印象に残っている雑誌があります。1992年10月に発行された「SD」(10月号)です。「Hotel: Hospitality Design(ホテル:ホスピタリティ・デザイン)」という特集が組まれていました。
ホテル:ホスピタリティ・デザインは、あらゆる意味で複雑な与条件に対して、高度に洗練された解を要求される分野である。
その分野はテーマにもとづきながらも、多様な趣味を排除することなく包摂し、飽くことなく快楽を提供し続ける宿命にある。
教育、医療をはじめ、すべての施設が「もてなしの空間」化する現在、その原点としてのホテル:ホスピタリティ・デザインを考察する。
「SD」10月号/1992年 より
雑誌のページをめくりながら、手が震えてきたのを覚えています。「数十ページの企画が1ページで語れる!」、そんな事例がたくさん載っていたからです。特集記事をベースに図書館へ行って、資料をまとめたわけですが、その作業が楽しくてしかたがありませんでした。
誘惑のデザイン原理
「説得」のデザインは、メッセージが明快なコミュニケーションであるのに対し、「誘惑」のデザインは、メッセージが不在のコミュニケーションである
「SD」10月号/1992年 より
「説得」のデザインは「参照と論理性を持つ空間創造」、「誘惑」のデザインは「引用と寓意性を持つ空間創造」という対比で語られている記事があり、その実例(写真)をみながら、スクリーンメディアのロジックに落とし込んでいきました。
自然の環境により注意が払われるようになると、並行して人工の環境にも注意が払われるようになる。もうすでにグッドデザインが氾濫している今日にあっては、次第に多くの人々が将来の人工環境の中に適切な場所をもつ必要性を認識しはじめている
「SD」10月号/1992年 より
私は、東京ディズニーランドを100回以上通い、アナハイムやフロリダにも行きました(詳しくは個人サイトの方を)。その理由のひとつに、米国の「誘惑のデザイン」、そしてマニュアル化された「おもてなし」教育への関心がありました。
なによりデザイナーに対しては「おもてなし」云々のベクトルから離れ、「誘惑のデザイン」をどう創造するか、といったアプローチをとっていることに刺激され、「感動」とか「欲望」などの勉強が必要だと痛感したのです。
参考A:
- 鹿島出版会
- SDバックナンバー
参考B:
ホスピタリティーあふれる宿
「ホスピタリティ」という言葉はギリシア語のフィロクセノス(=外来者への愛)の対応語で、hospitalとhotelの同義語です
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