記憶と記録 No.14「アクセシビリティ」
過去の日記から「記憶」を拾い出し、現在の「記録」と照らし合わせるプライベート・ノート
No.14「アクセシビリティ」
私がアクセシビリティを学校の授業に取り入れたのは、1995年4月に出された「通産省アクセシビリティ指針」がきっかけでした。今から12年前のことです。
通商産業省告示第二百三十一号
障害者等情報処理機器アクセシビリティ指針を次のように定める。
平成七年四月二十日通商産業大臣 橋本龍太郎参考:「こころWeb」より
障害者等情報処理機器アクセシビリティ指針
アクセシビリティ指針は、必要度や実現性の観点から「必須機能」「重要機能」「推奨機能」に分類されていました。たとえば、以下のような項目があります(一部抜粋)。
- [必須機能]ディスプレイ上の文字情報を拡大表示できるようにする
- [重要機能]グラフィック画面の拡大ができるようにする
- [重要機能]特定の色に重要な意味を持たせないようにするか、配色を変更できるようにする
- [推奨機能]操作対象となる対話部分がグラフィック情報として表現され、かつ、空間的に配置されているGUIにおいて、これらのグラフィック情報や空間情報を音響情報、触覚情報に変換して出力する
1995年はインターネットが商用化された年ですが、プロジェクトの大半はCD-ROMタイトルなどのコンテンツ企画でした。この頃の発想はパソコンOSに搭載されているアクセシビリティ機能をコンテンツ内でどう活用するか、というものだったと記憶しています。本格的な勉強は1997年から始まりました。
- 関連エントリー「Silverlight系リッチWebのアクセシビリティ」
この年に出版された「障害者とMacintosh」という書籍が大変参考になり、実は現在でも資料として読み返すことがあります。たとえば、マーケット創出に関すること。以下は、本からの引用です。
「ユニバーサルデザイン」の利点は、ひとつには「企業側のメリット」がある。障害を持つ人だけを対象にしていると市場が小さくなり、企業にとってのリスクも高くなる。しかし、一般商品の中に、あらゆる障害を持つ人のアクセス機能が内蔵されていればそれだけ市場が拡大される。
「障害者とMacintosh」1997年より
当時参加した勉強会でも「障害者のための~」というフレーズはやめよう、という話になるのです。
元々想定されていた対象者以外の人たち、例えば、乳母車を押している人や荷物を運んでいる人などにも喜ばれている。お年寄りにとっても少し危険が減った。歩道のカーブカット化は車イスだけではなく、一般にメリットをもたらしたのだ。
「障害者のために」と計画され、変革されたことが、じつはもっとたくさんの人に利益をもたらす。こういう、いわばさまざまな「カーブカット」はいろんな分野にたくさんあるのだ。
「障害者とMacintosh」1997年より
要するに、どんなに有効なプロジェクトでもサスティナブルでなければいけない、そのためには層を広げる必要があるということです。これは10年前のことですが、現在のナイトバーなど娯楽施設におけるクローズドキャプションの需要をみると、マーケットの重要性をあらためて感じます(米国の動向)。
その他、この書籍には具体的な事例がたくさん盛り込まれており、CD-ROMコンテンツのプランニングに活用させていただきました。
電話は聴覚障害者にとっては使いにくいものであった。耳の聞こえない人には、音声の伝達手段である電話はもともと無縁のものだと考える人がいるかもしれないが、それは違う。
多くの聴覚障害者は電話を使うことができる。空気を伝わる音をキャッチすることができないまでも、音を振動に変え、その振動を頭骨につたえることで音を「聴き取れる」聴覚障害者も多い。
しかし、問題は「電話の呼び出し音が聞こえない」のである。
「障害者とMacintosh」1997年より
視覚障害者にとってWindowsやMacのようなGUI環境はとても不便、ひとつずつ順番に操作が示されるMS-DOSなどのCUI(コマンドライン・インターフェイス)の方がまだ使いやすい、ということも書かれていました。
- 書籍名:障害者とMacintosh
- 著者:小川美紀雄
- 発行:毎日コミュニケーションズ
- 発行日:1997年4年2日
1998年以降、インターネットの普及によってプロジェクトはネット対応に変わってくのですが、なぜかアクセシビティに関する勉強会は減っていったような気がします。情報建築学の場合も同様ですが、ゆるやかな世代交代によって風化していったのでしょう。
さて、なぜ今回「記憶と記録」でアクセシビティを取り上げたかというと、「Webアクセシビリティ ~標準準拠でアクセシブルなサイトを構築/管理するための考え方と実践~」という本が出版されたからです。
素晴らしい構成、是非ともお奨めしたい。全体を俯瞰できる本がやっと出てきたという感じですね(今、気づきましたが「障害者とMacintosh」と同じ毎日コミュニケーションズではありませんか‥)。
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