■講演テーマ:
「CSSデザインを自動化するための7つのルール」
<CSSデザイン自動化の話題に至までの(12、3年分の)長〜いお話>
第2回「センス・感性とは? 自然の秩序とデザイン」
Podcast(MP3)のテキスト版:
[1]絵描きさんと自動処理
フロリダのディズニーワールドへ行ったときの話。
Pleasure Island(プレジャーアイランド)って知っていますか?
大人の遊び場なので、18歳未満は保護者同伴じゃないと入ることができません(たしか午後7時以降)。旅行者はパスポートを見せることになります。飲酒OK、クラブもあります。ただ、ディズニーワールドですから私服警備員がたくさん!(私はクラブ内で「サングラス取れ」と言われてしまいました。怪しかったのか?未だに理由がよくわからん‥)
通りには似顔絵を描いてくれる人たちがいます。よく見る風景ですが、ここはちょっと違います。パソコン(+タブレット)を使って描くのです。
同行した知人が描いてもらうことになり、後ろで見学していました。
タブレットを使っているので、基本的には紙にペンで描く様子と変わらないのですが、時々瞬間的に絵が変化する。「ん、なんだ?」という感じです。みるみる絵ができ上がっていくのですが、何かおかしいんですね。
何が起こっているのだろうと思って、絵描きさんの背後に(まるで守護霊のように)立って、ジッと観察していたら理由がわかりました。部分的に作業を記録していて、必要に応じて実行していたのです。使っていたのは「Quickeys」というユーティリティソフト。実は私も使っていたので、すぐわかりました。
似顔絵を描くというのは完全にアナログちっくな「手作業」なんですが、「パソコンを使って」描いているというのがポイントでしょうね。手描きをプログラムによって実行させているペイントソフトウェアには、ハンドワークでは真似のできない機能がたくさんあって、描く作業を「支援」してくれます。
「支援」だけではなくて、ほんの少しだけど「自動化」してくれる工程もある。ここの絵描きさんたちは、タブレットを使ったハンドワークと「Quickeys」による自動処理を巧みに使い分けていたんですね。
絵のクオリティを落とさず、短時間で仕上げるシステムだったわけです。まぁ、なんといってもお客さんの数でその日の稼ぎが決まるわけですから。
[2]クリエーターの負担、もう限界!
この頃はまだPhotoshopにアクションが搭載されていなかったので、「Quickeys」を使っていました。やることは単純な作業の繰り返しで、例えば「ある画像をガイドラインに記載されているサイズにトリミングして、指定したフォーマットで書き出し、管理用のフォルダに移動させる」といったルーチンワークを自動処理していました。
ディズニー・プレジャーアイランドにいた絵描きさんのワークフローに影響を受けてしまってからは、もっとうまく活用できないか考えるようになりました。ちょうど、マルチメディアブームの頃でCD-ROMコンテンツの企画をたくさん手掛けていたので、強引に試してみることにしたんですね。
マルチメディアクリエーター(死語?)なんて、この頃「突然登場した職業」で、元はグラフィックデザイナーやっていた人が多かったような気がします。あと、エディトリアルをやっていた人、映像やっていた人、カメラマンから転身した人もいました。
つまり、ビジュアル系の人が多かったんですね。
マルチメディアクリエーター(死語?)の仕事はほんと大変で、グラフィックだけではなくインターフェイスデザイン、スクリプティング、アニメーション演出、サウンドからビデオ、おまけにCD-ROMマスター焼きまでやっている人もいて、午前中、スタジオに行くと「キャンプ場」のようでした(寝袋でお休みになっているという状況)。
まぁ、現在のWebクリエーターという職業はもっと大変なのかもしれませんが‥
クリエーターの方々はとてもアンテナが高く、新しい情報に敏感だったので最新のテクノロジーを積極的に仕事に取り込んでいました。情熱的でワクワクしながら作業している様子が伝わってきましたが、疲労は必ず蓄積されていくもの。一気に落ち込んだり、判断力が鈍って本来の力を発揮できないという場面も目にしていました。
企画に参加していた某スタジオのプロデューサーが‥
「こんな状態が続くのはよくないね。そろそろ分業体制に移行していく時期かな」
とぼやいていたのですが、どうやって役割分担するか悩んでいて、とりあえずプロジェクトチームを結成。私もお手伝いすることになったんです。当時は学校の先生だったので、学生数名を引き連れてチームに参加しながら進めることにしました。
私の頭の中に「自動処理」のアイディアがあったのは言うまでもありません。
[3]自動化は想像以上に大変だった
制作現場ではたくさんのアプリケーションソフトが使われていました。まぁ、マルチメディア(死語)ってくらいですから、扱うデータの種類と同じくらいのソフトを必要としたわけです。
まず、実験的にアプリケーションソフト間のデータ変換を自動化することにしました。当時は同じ会社のソフトでも連携がとれていなくて、(何度も何度も‥)ファイルを開いたり閉じたり、クリエーターが機械的な作業もやっていたのです。
作業を分解して分かったのですが、こういう機械的な作業はたくさんあり、使っている時間も無視できないほど。つまり、効率化できる工程は想像以上に多かったということですね。
こうやって書くと、「機械的な作業の繰り返しはQuickeysで自動処理して〜」みたいな感じで、容易にいけそうな感じですが、実際はそんな簡単なものではありませんでした。自動化の作業が大変というよりも、なんというか‥人間をもっと勉強する必要があった‥ということです。
はっきり言うと、クリエーターさんが使いたがらない。
自動変換の仕組みを紹介すると「これは便利ですね」と言いつつ、忙しくなってくると「使うの面倒だから手でやります」となる。
プロデューサーから一言、「クリエーターの心理がわかってないね」と。
「ワークフローもでき上がってないのに、突然、新しいツールを渡してもダメだよ。どんなに便利なものでも後回しになる。とりあえず、役割分担を定義していこうよ。役割が曖昧で感覚的な作業環境に自動化のプロセスは入れにくいから。」
プロデューサー曰く、今後アプリケーションソフトの会社は「ソフト間の連携」を売りにしてくるという話。
1人に何本も買わせるというより、チーム作業で使えるようにするのが狙いだと。この頃は同じ開発会社なのにソフトごとにインターフェイスが違ってましたから、まぁ「そうなれば良いなぁ」という感じで聞いてました。
[4]どの作業にどのくらいの時間が必要か?
私は学校で教えていたこともあって、アプリケーションソフトの機能を基準としたデザイン思考には注意せよ!という立場をとっていました。本来の作業ではない部分(前述したデータ変換など)に時間をとられて、提出するデザイン案が減ってしまうのは問題というわけです。
○「デザイン案、6つくらい出してくださいね」
後日、
△「すみません、時間が足りなくて2案しかできませんでした」
○「クライアントとの意見交換で2案というのはマズイよ。何をやっていたの?」
△「いやぁ、扱うファイルが多いのでデータ変換に時間かかってしまいまして」
○「デザイナーが本来やるべき仕事って何なのかなぁ〜」
△「そんなこと言われましても。いろいろやることがあるんです。」
上記のような情景を目撃するたびに、(授業できちんと提示するためにも)デザインの作業区分について勉強しないといけないなぁと痛感していました。
その後、アプリケーションソフトの連携機能はどんどん進化して、ソフト側で簡単に処理できるようになっていったわけですが、楽になるのは最初だけ。今まで大変だった作業が自動化されると、クライアントからの要求も上がっていきます。さらに、10万円が相場だった作業に対して「3万円でやります」という人が出てくるのも、こういうタイミングです。
つまり、自動化されても「楽にはならない」
「楽にはならない」けど、大きなメリットが得られるのは間違いない。
本来やらなくていけないクリエイティブな作業で忙しいならOKということですね。
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