近日発売予定の書籍「Making a Rule for Web Design」の原稿メモ
[1]Web業界を俯瞰して見えてきたもの
昨年、ある制作会社のワークフロー改善を依頼されました。その会社にはDreamweaver MXを核としたワークフローが出来上がっており、特に業務上の問題はなかったのですが、新たな取り組みの必要性を強調していました。きっかけは、クライアントからの要求に「アクセシビリティ」というキーワードが含まれていたこと。そこで、まずは「文書の構造化」「物理マークアップの排除」「検証ツールの導入」を提案して、教育プログラムをスタートしました。ところが結果的には失敗、うまくいきませんでした。実践するには「時間」と「教育コスト」があまりにも足りなかったのです。
最終手段ということで「DreamweaverをMXから8にバージョンアップ」することを再提案。実行してみると、すんなり目標達成できました。話は単純です。要するにアプリケーションソフトの支援ツールによって改善したわけです。MXでは、font要素などで物理マークアップする「HTMLスタイル」がデフォルトでしたが、MX2004からは「CSS」がデフォルトに変更されています。ボールドと表示されるアイコンをクリックするとMXでは「b要素」、MX2004以降は「strong要素」が記述されます。詳細に見ていくと多少の問題はありますが、環境設定や若干のカスタマイズで調整することができました。
[2]日々の業務と依存するアプリケーションソフト
アプリケーションソフトに依存する「HTMLやCSSを直接記述しない」Webデザイナーはたくさんいます。数で比較するとCSSを習得しているデザイナーより圧倒的に多いでしょう。前述したように時間と教育コストを確保できない会社は多く、デザイナーに「がんばって習得してください」とは言えない事情があります。
依頼を受けた制作会社の旧ワークフローで作られたWebページにはh1要素がなく、font要素とb要素で見出しを表現していました。Dreamweaver 8にバージョンアップしてからの新ワークフローでは、物理マークアップが無くなり、table要素によるページレイアウトも最小限におさえられています。重要なのは、デザイナーがXHTMLやCSSを記述していないことです。時間や教育コストを捻出できない状況で、目標達成できたのはツールのおかげだと言えるでしょう。
[3]標準化の意味を伝えること
Webデザインに対する強制力のある規則はありません。W3Cも「勧告」という形をとっています。Web業界の先端にいる人たちは、W3Cの勧告を国際的な「標準規格」として受け止め、自ら採用し、啓蒙しています。特に、過去の「ユーザーの利便性を著しく損ねた経緯(ブラウザ戦争)」を知っている人は、標準化に積極的です。しかし、CSSを流行と捉える「戦争を知らない若者たち」も多く、共有化されている情報は想像以上に少ない感じがします。「HTMLやCSSを直接記述しない」デザイナーの方々にとっては、さらに関係性の低い話になっています。
本書は、これらの問題を解決するものではありませんが、ワークフローや開発ツールに関するいくつかの提案をしています。「作業をシンプルにするためのアイディア集」といった構成です。ワークフロー改善を模索する人など、「作業の進め方」を見直すきっかけになれば幸いです。
[4]35年前から実践されてきたマークアップと構造化の概念
ドキュメントの構造化は、1969年にIBMが開発した「GML」というマークアップ言語によって実践されるようになりました。膨大な技術資料、仕様書、ユーザーマニュアルなどを管理、発行していたIBMは世界最大のパブリッシャーでした。大量のドキュメントを効率良く管理し、迅速に更新するためにはマークアップ言語が必要だったのです。
1986年にISOによって国際規格となった「SGML」はこのGMLがベースになっています。そして、Webの標準マークアップ言語として使われている「HTML」はSGMLを参考にしています。文書を構造化することのメリットは、すでに30年以上も前に議論・評価されており、情報・科学系の出版社や研究機関、企業などで実践活用されてきました(その後に登場する「DSSSL(ディッセル)」という言語は最も古いスタイルシートです。フルスペルは「Document Style Semantics and Specification Language」)。
SGMLはあまりにも強力すぎて広く普及しませんでしたが、HTMLはシンプルすぎて複雑なWebでは「力不足」、徐々にXMLコーディングの需要が高まってきています。
(ボツ原稿より〜一部)
●過去の執筆メモ:
BOOK-EX [ex-001][ex-002][ex-003][ex-004][ex-005]