技術面から見るアングラ・コンテンツ
私たちが、メディアなどで作品を紹介する場合、大まかな線引きをおこなう。その基準、切り口は、制作者や制作方法、規模、分野など様々である。その中で最も扱いの難しさを感じるのが、アングラコンテンツである。
アングラマネーというのは、地下社会で流通する実態が把握できないお金のことだが、アングラコンテンツも表に出てこない作品と捉えてよいだろう。猥褻、暴力、思想、宗教、政治をテーマに非常に刺激性の高い表現を取り入れている作品などは、ネットで公開されていても(誰でも見られる状態でも)その世界以外には広まらないものだ。
反社会的行為を賛美するような作品は別として、性描写中心のアダルトな作品は自主規制が設けられ、その世界で流通している。禁止事項や(モザイクなどの)隠蔽処理技術についても明確に定められていて、制作者はそのガイドラインに従って表現しているのだ。
さて、ここに「BIGCOCK VOL.2」というCD-ROMマガジンがある。今から9年前に発売されたものだ。2枚組で2,900円。

当時は、マルチメディアブームでパソコンにCD-ROMドライブが標準搭載され始めた頃だ。このCD-ROMマガジンは、高画質の”フルモーション”ムービーを実現し、非常に注目された。アダルト作品だが、
デザイン、映像系の雑誌などでも紹介されたのだ。このCD-ROMマガジンを制作したKUKIは、老舗のアダルトソフトメーカーである。(音楽ビデオや映画のプロデュースも手掛ける。映画ではダイアモンドユカイ主演の「TOKYO POP」や実相寺昭雄監督の「ラ・ヴァルス」などがある。)
KUKIのアダルトCD-ROMは、1993年に初めてリリースされ、95年発売のCD-ROMは1万枚以上のセールスを記録、最先端の技術を駆使することでも知られていた。CD-ROMの画面から必要な機能拡張ファイルなどをインストールできるようにする等、ユーザーに対して配慮しながら積極的に新技術を採用したのだ。QuickTimeの新バージョンがリリースされたら、まずアダルトCD-ROMを見たものだ。使えるかどうか判断するのだ。それくらい採用が早かったのである。(余談だが、幕張メッセで開催されていたMac World の初期は凄かった。アダルトコンテンツのブースが集まる専用のエリアがあり、AV女優などがコンパニオンをやっていたのだ。)
実は、QuickTime MPEGムービーは、前述した「BIGCOCK VOL.2」において、世界で初めて公開されたと言ってよい。世界に5台しかなかったハードウェアを1台借りて制作していたのだ。画期的なCD-ROMだったが、QuickTime MPEGのエクステンションがリリースされるまで2年かかっているので、購入者がムービーを見るには専用ボードが必要だった。しかも、LC630という機種にしか差せなかったらしい。
その他、TrueMotion-S によるフルモーションムービーやQuickTime VR を駆使したコンテンツなど、クリエーターにとって気になっていた新技術が”具体的”に使われていた。
私は、打ち合わせや取材などで秋葉原に行くが、ソフトショップもよく見てまわる。アングラコンテンツを”気軽”に店頭で買える街は、秋葉原しかないだろう。(関西なら日本橋か‥。)表に出てこないはずの作品がパッケージで買える特別な街と言ってよい。
作品の中には、技術的に優れたものがある。Flash でここまで表現できるのか、と感心してしまう作品も多い。10年前、アダルトCD-ROMのムービーを見て、「こんなに大きく表示してるのに、どうしてスムーズに再生するんだ?」などと驚いていたが、それに等しい驚きを感じるときがある。最新の技術資料を本国から取り寄せていたり、何度も実験を繰り返して、ノウハウを持った上で表現している制作者のパワー、情熱はすごいものだ。
10月 23, 2004 [05cc1]クリエーター[コラム] | Permalink
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